BtoCでも「長期の検討期間」が必要な商品とは
一般的にBtoC(消費者向け)の商品は、「衝動買い」「即購入」というイメージが強いかもしれません。たしかに日用品やファッションアイテムなど手ごろな価格帯の商品は、SNS広告を見てそのまま購入することも多いと思います。
しかし「住宅購入」のように金額が高く、専門的な知識や情報が必要な商品は、短期間ではなかなか決められません。多くの方は複数の住宅メーカーやモデルハウスを見学したり、住宅ローン・土地探しなど多角的に検討したりと、時間をかけて進めます。こうした商品には「長い検討期間」があり、BtoCでありながらBtoBの営業活動に近いプロセスが求められます。
一般的なBtoCの問題点
多くのBtoCマーケティングは、短いキャンペーンや割引施策に力を注ぎがちで、長期にわたってお客さまとのつながりを深める視点が薄い場合があります。一方で、BtoB(法人向け)では、すぐに契約に至らない見込み顧客にも段階的に情報をお渡しし、少しずつ理解を深めてもらいながら最終的な成約につなげるリードナーチャリングの考え方が浸透しています。
この記事では、そのBtoB的なリードナーチャリングを住宅商品にも活かす方法を、Instagramマーケティングを中心に3つの視点からまとめました。
第1の発想転換:短期的な成果を狙わず、じっくりと関係を築く
すぐの成約を迫らず、安心してもらえる土台づくりを大切に
短期志向のBtoC施策では「SNSフォロー → 即来場 → 即契約」のように、できるだけ早い成果を期待しがちです。もちろん、すぐに行動してくださる方もいますが、住宅という大きな買い物では、あまりにも早い段階で「来場してください」「契約しませんか」といった誘いをすると、警戒感を持たれてしまうかもしれません。
BtoBのリードナーチャリングでは、まだ商品やサービスについて詳しく知らない方に向けて、何段階にもわたって情報をお届けし、自然なかたちで検討を進めてもらいます。住宅の場合も、Instagram上で「住まい選びに役立つ知識」や「実際に建てたお客さまの事例」などを少しずつ公開しながら、興味を高めてもらう流れを意識するとよいでしょう。
実践アイデア
Instagramで定期的に役立つ情報を発信する
「建築家インタビュー」「家づくりの基礎Q&A」「選び方のコツ」など、多角的な情報を継続して投稿し、疑問や不安を解消する機会を提供します。
シリーズ投稿で分かりやすくする
「住宅ローンの初歩 → 中級 → 詳しく知りたい方向け」のように段階的に投稿を分けておくと、一度にたくさんの情報を詰め込まなくても済みます。
第2の発想転換:顧客の状態や関心度にあわせたアプローチをする
みんな同じではない。状況別に欲しい情報が変わる
よくあるBtoCマーケティングでは、フォロワー全員に一括で同じ内容を発信しがちです。しかし、住宅を検討している方でも、
- これから情報を集め始めたばかりの人
→「家を買うときに何から手を付ければいいの?」など基礎的な知識を探している
- 複数の住宅メーカーと比較検討している人
→「価格やデザイン、メンテナンス費はどれくらいか?」など具体的な指標を比べている
- 最終候補を絞っていて、あと一押しが欲しい人
→「実際に建てた方の体験談や、購入後のサポートはどうなっているか?」といったリアルな声を知りたい
といったように、必要とする情報はそれぞれ違います。ここに注目し、一斉送信ではなく相手の状況に合う情報をピンポイントで届けるのが、BtoB的な考え方です。
実践アイデア
ハイライトで整理する
プロフィールにあるハイライトを「初めての家づくり」「完成事例」「資金計画」「メンテナンス」などに分けておき、必要な情報へスムーズに誘導します。
ストーリーズやDMで柔軟にコミュニケーション
「詳しく知りたい」とコメントしてくれた方には、ストーリーズで関連投稿を再紹介したり、個別にDMを送り、「もっと知りたい方向けの資料」のURLを案内するなど、段階に応じて丁寧に対応することができます。
セグメント |
顧状況態 |
有効なコンテンツ例 |
導入期 |
住宅購入を考え始めたばかり |
初歩的なQ&A、基礎知識ストーリーズ |
比較検討期 |
いくつかのメーカーと並行して検討中 |
各プランの違い、費用シュミレーション、モデルハウス見学レポート |
購入直前期 |
最後の一押しを迷っている状態 |
完成事例、住まい手のインタビュー動画、アフターサポート情報 |
第3の発想転換:単発キャンペーンより、複数回のタッチポイントを意識する
期間限定の値引きだけに頼らず、定期的な接点を増やす
BtoCではよく、「週末限定の来場特典」や「期間内に契約すると○○割引」などが行われます。こうした施策は短期的には有効ですが、住宅のように検討期間が長い商品においては、より多くのタッチポイント(接点)を重ねて安心感を高めてもらうことが肝心です。
BtoBの場合、まだ契約に至らないリード(見込み顧客)にも、イベントやセミナー、メールマガジンなどで継続的にアプローチします。同じように、Instagramでライブ配信やQ&A企画を定期的に行っていくと、お客さまが何度でも興味を持てるきっかけが生まれます。
実践アイデア
シリーズ形式での投稿
「土地探しのポイント → 予算立ての考え方 → 実例紹介 → 最終チェックリスト」のようにストーリー性をもたせ、連続して見てもらえる工夫をします。
ライブ配信やオンライン相談を定期開催
担当者や建築家が出演し、フォロワーの質問にリアルタイムで回答する機会をつくります。事前にストーリーズで質問を募集すれば、さらに盛り上がりやすくなります。
まとめ
ここまでご紹介した3つの発想転換は、BtoBで一般的なリードナーチャリングを住宅商品のBtoCでも活かすための基本ポイントです。
- 短期的な成果ばかり追わず、関係をじっくり深める
すぐに契約を迫るのではなく、段階にあった情報発信やサポートを通じて、お客さまが安心して検討を続けられるようにします。
- セグメント別に適切な情報を届ける
「導入期」「比較検討期」「最終段階」といった状態に合わせて、必要な内容をわかりやすく提示し、疑問を一つひとつ解決していきます。
- 複数回にわたるやりとりを積み重ねる
単発の値引きキャンペーンだけに頼らず、ライブ配信や連載投稿で、お客さまと何度もつながりを持ち続けられる仕掛けをつくりましょう。
これらをInstagramで実行していくことで、高額で専門性の高い住宅商品でも、「分からないことを質問しやすい」「気軽に情報収集ができる」「担当者の人柄を感じられる」などのメリットを生み出せます。
今後の展開例
- 購買ファネルの設計や具体的なメッセージ作り|「導入期 → 比較検討期 → 最終段階 → 購入後フォロー」という流れで、どのタイミングでどんなテーマを発信するか、成功事例と合わせて解説します。
- Instagramのデータ活用方法|「ストーリーズの閲覧率」「特定ハイライトのアクセス数」などを参考にして、関心度合いが高そうなフォロワーへの追加フォローを行うなど、実践的なノウハウをお伝えします。
Instagramは写真や短期的な販促だけの場ではなく、住宅のような長期検討が必要な商品でも、「見える化された情報の蓄積」「担当者とのつながり」が感じられるプラットフォームへ進化しています。ぜひ今回のポイントを取り入れて、より丁寧で長期的な住宅マーケティングにチャレンジしてみてください。