ミッフィーの作者ディック・ブルーナが暮らした街、オランダのユトレヒト。カフェノマ弓庭(ゆば)は、そのユトレヒトに幾度となく訪れてきました。彼女を惹きつけるのは、ブルーナの作品の世界観と、ユトレヒトの古い街並み。ここでは、弓庭の幼少期から続くブルーナのエピソードや、ユトレヒトの街から得たインスピレーション、さらにブルーナの暮らし方に見るシンプルさを、カフェノマ的な切り口でご紹介します。
シンプル×温かみのある表現
ディック・ブルーナの作品の大きな特徴は、定規で描いたような真っ直ぐな線ではなく、ジガジガと揺れる線にあります。一見すると粗削りなようですが、その揺らぎこそが見る人に温かみや余白を与えるように思えます。
カフェノマが提案する住まいづくりでも「洗練8割×温かみ2割」というバランスを大切にしています。無駄をそぎ落としつつも、ビンテージ家具や少し不揃いなアイテムで揺らぎを生み出し、肩の力が抜けるようなくつろぎを演出する。そんな感覚が、ブルーナの絵と共通しているのかもしれません。

ユトレヒトの街に見る家と街のいい関係
ユトレヒトは、アムステルダムから特急に乗って45分ほどの地方都市。古い教会を中心に落ち着いた街並みが広がる一方、運河沿いには雑貨店やカフェが並び、ほどよい賑わいが感じられます。
アムステルダムほど観光客は多くなく、普通の家々や小さなオフィスもあり、そこに暮らす人々の日常が垣間見えるような、ゆったりとした雰囲気の街。ふつうの家と外の街とが絶妙に調和し、カフェノマにとっては、心地よい街の参考都市のような存在です。
オランダで一番高い教会(ドム教会)。ここを中心に街が成り立っています。
静かなルーティンと一人時間を大切に
弓庭が憧れるのは、アシスタントを雇わずひとりで静かに創作を続けるブルーナの姿勢。朝は決まったカフェの同じ席で朝食。アトリエへ自転車で向かって掃除を済ませると、コーヒーを飲み、音楽をかけながら午前中の集中作業。ランチをはさんでまたひと仕事し、午後は早めに切り上げる——そんなルーティンを、ずっと続けていたそうです。
ユトレヒトのカフェ
コロナ禍以降、多くの企業が取り入れる在宅ワーク。自宅で働く環境づくりに苦心するという声もときどき耳にします。リビングの一角に小さな自分だけのスペースを作ったり、決まった場所でコーヒーを淹れてから仕事を始めるなど、ルーティンを持つことも暮らしを楽しむヒントになるかもしれません。
不完全さがもたらす親しみや余白
ブルーナのイラストが日本で商品化される際、ときどき「ジガジガした線」がきれいに消されてしまうことがあります。完璧に整えられた線にはない、手仕事ならではの揺らぎが本来の魅力。家づくりでも同じで、古レンガやビンテージ家具のように経年変化が感じられるものをあえて取り入れると、人の気配が感じられて落ち着くと感じています。
ディック・ブルーナのゆれる線は、そんな「あえて手仕事の痕跡を残す」余韻を教えてくれます。見た目の美しさだけを追求せず、不揃いさをそのまま楽しむ余地をつくるのも、住まいに愛着を持つコツといえそうです。

まとめ:揺らぐ線、シンプルな暮らし
幼い頃に出合った絵本のワンシーンから始まり、ユトレヒトの街を何度も訪れるほどディック・ブルーナに魅了され続けてきた弓庭。その視点は、カフェノマが提案する住まいづくりのコンセプトと重なる部分が数多くあります。
- 好きなものを暮らしに反映して、日常をちょっと楽しくする。
- シンプルだけど完璧にしすぎないからこそ、人の手の温かみが感じられる。
- 自分だけのペースを守れるルーティンが、生活に心地よいリズムをつくってくれる。
ブルーナの揺れる線は、ほんの少し不完全なほうが、かえって人の心を捉える力を持つと教えてくれます。私たちの住まいも同じ。ピシッと整えすぎるより、どこかに味わいを残したほうが、きっとコーヒーを飲みたくなるようなくつろぎを演出してくれるでしょう。
